政府は、沖縄県のキャンプ・シュワブ沿岸部(名護市)に建設予定の米海兵隊普天間飛行場(宜野湾市)の代替施設を、2006年に日米両政府が合意した案より90メートル程度、沖合に移動する修正を行う方針を固めた。
沖縄県や名護市も受け入れに前向きな姿勢を見せている。これにより、1996年の返還合意から12年近く停滞している普天間移設問題が動き出す可能性が出てきた。
普天間移設問題では、旧防衛庁と名護市が06年4月、シュワブ沿岸部にV字形滑走路を建設することで基本合意した。名護市はその後、300メートル以上、沖合に移動する試案を提示し、沖縄県も同調したが、政府が難色を示し、平行線をたどったまま環境影響評価の手続きが進んでいる。政府は09年8月には周辺海域の埋め立てを県に申請し、14年に代替施設を完成させる計画だ。
県や名護市が沖合移動を求めるのは、騒音や事故の際の危険性を低減するためだ。政府は米側との再調整が必要になることなどで否定的だったが、周辺海域の埋め立てには知事の承認が不可欠であるため、町村官房長官らが主導して県側に譲歩すべきだと判断した。
沖縄県の環境影響評価条例の施行規則では、大幅な計画の変更は手続きのやり直しが必要だ。移動距離が約55メートル以内ならやり直す必要はないが、県や名護市はさらに大幅な移動を主張している。政府は県側の要求にできるだけこたえるため、代替施設の当初位置から約90メートル沖合にある「長島」ぎりぎりまで移動する案を軸に検討する構えだ。
米側との調整について、政府は「90メートル程度の移動なら運用上の問題も生じず、協力を得られる」と見ている。ただ、名護市が求める滑走路の短縮については、米側の反発が予想されるため、政府は使用協定を結んで騒音の大きい訓練を制限することなどで市に理解を得る考えだ。
こうした政府の方針に対し、沖縄県の仲井真弘多知事は読売新聞の取材に、「名護市の意向を尊重して考えたい。移動距離は、政府といったん合意できれば、その後に要求を上積みするつもりはない」と語った。名護市も「100メートル近く移動できれば地元に説明できる。滑走路の長さの問題も、使用協定を結んで使い方を限定すればクリアできる」(幹部)としている。
政府は環境影響評価の方法書に対する知事の意見を1月21日までに聞き、そのうえで調査を始める。知事の意見表明後の1月下旬に沖縄県や関係市町村とつくる普天間移設協議会を開き、調査開始への理解を得る方針だ。こうした動きと並行して県や市と政府案の修正を非公式に検討し、3月にも協議会の議題にしたい考えだ。ただ、県内移設に反対する革新陣営や市民団体の反発が予想され、流動的な要素も残っている。
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