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「1人が変われば社会が動くことを知った」と語る新成人の富田晋さん=名護市辺野古沖 |
成人の日の10日、スーツの代わりにウエットスーツを着て過ごした若者がいる。富田晋さん(20)=名護市=は同日、親が贈ってくれた初めてのスーツを陸に残し、船を操って名護市辺野古の海に出た。米軍普天間飛行場に代わる基地建設が予定されている辺野古沖。富田さんは「命を守る会」の活動を支え、海上でのボーリング地質調査を阻止しようと、連日海に出ている。
16歳で東京の高校を中退。「守る会」のおばあたちに出会った。基地反対運動は1時の活気を失っていた。だが沖縄戦を生き延びたお年寄りたちは「子や孫に同じ体験はさせない」と、80歳を越えた体で座り込みを続けていた。富田さんはその生き様に大きく心を打たれ、「おばあたちと共に生き、基地建設を止める」と腹をくくった。
1日の行動はホームページ上の「日誌」で報告している。書き切れないほどの出会いや出来事があふれる毎日で、いつも思い出すのは1人のお年寄りの言葉という。「森を見てごらん。人が木を切っても木は一粒の種を残し、大地に根を張ってまた森をつくる。人間も同じ」
かつて富田さんが唯一の若者だった現場に、今では全国から20代が続々と訪れている。彼らが、そこで社会を変えるという「希望」を学び、それぞれの古里で新たな行動を始めて、さらに仲間を増やしていると富田さんは実感する。「一粒の種」の力を教えてくれたお年寄りの言葉がよみがえるという。
同日、陸では「黄金孫(くがにまご)」の成人を祝おうと、おばあたちがピザやケーキを用意し、海からの帰りを待っていた。到着後胴上げされた富田さんは、「いい20歳です。本当に大切なものや、うれしいことを教えてもらった」。富田さんの「種まき」はこれからも続く。
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